1、調査地域の設定 |
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今回の研究では、空知管内の上砂川町を対象地域とすることにした。その理由は以下のとおりである。上砂川町は、三井砂川炭鉱によって繁栄した町であり、最盛期には3万人を超える人々が生活していた。石炭産業を唯一の基幹産業としていた町であり、さらに、ほぼ三井鉱山によってのみ鉱山開発が行われたため、炭鉱が町の形成に与えた影響を調査しやすいと考えられるからである。
また、上砂川町との比較を行うため、北海道赤平市を「先進地の事例」として取り上げた。
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2、上砂川町の概要 |
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1)地勢
上砂川町は、空知支庁のほぼ中央部に位置し(図1)、歌志内市、砂川市、奈井江町、芦別市と接している。辺毛山から流れるパンケウタシナイ川が町の北部を貫いて大きな谷を形成しており、谷沿いにある集落と南東の山岳地帯によって町が形成されている。上砂川町の面積のうち、宅地はわずか4%あまりで、90%以上を山林が占めている(図2)。
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2)産業
上砂川町では、1985(昭和60)年には、全就業者のおよそ73%が炭鉱に関わる仕事に携わっていた。1987(昭和62)年に三井砂川炭鉱が閉山すると、唯一の基幹産業を失った町は大きな衝撃を受ける。積極的な企業誘致活動によっていくつかの企業が進出したものの、炭鉱離職者の受け皿になるには程遠く、多くの人は新たな職を求めて転出した。また、平地の少ない上砂川町では田畑の確保が難しいため、第一次産業はほとんどないに等しく、全就業者に占める第一次産業の割合はおよそ2%である(図3)。しかしながら、人工ホダ木による椎茸栽培工場が第一次産業に分類されるため、工場への就業者も第一次産業の就業者に含まれており、実際に農業や林業を営む就業者はゼロに等しい。
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3)産業
人口最盛期の1950(昭和25)年には3万人を越える人々が暮らしていた上砂川町であるが、三井砂川炭鉱の合理化が行われるに従って人口は急激に減少し、1968(昭和43)年には人口2万人を切り、1985(昭和60)年には1万人を下回った(図4)。さらに、その後も人口の減少は続き、2003(平成15)年の住民基本台帳による統計では5000人を下回った。世代別で見ると、人口のうちおよそ33%が65歳以上の老人であり、空知管内では夕張市に次いで高齢化が進んでいる(図5)。
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